昔の自分

探し物をしていたら、机の奥からノートが出てきた。うっすらと見覚えがある。
中身を開くと、10年近く前に本を読んで心に残った文章や、それを読んで思った事などがつらつらと書きとめておいたものだ。字は確かに私のだけど、内容はあまり覚えていないので他人の文のようだ。
青臭くて知ったかぶりをしていてひたすらこっぱずかしい。どう処分したものかと考えるうち、当時ひときわ感動した(らしい)文章をよんでうむむとなった。 
「生の来たるや却くる能わず。その去るや止むる能わず」この意味ははっきり覚えている。荘氏の言葉だ。却くるは「しりぞくる」だったような気がするが、不明。
「生命が生まれてくるのをとめることはできないし、死んでいくのをとめることもできない」の意。

小学生だか中学生のころ、「ああ、誰でも死ぬんだな」とわかってから、ずっと死が怖くて仕方なかった。苦しさとか寂しさではなくて、この世から自分の意識が消えるという事がどういうことなのか、さっぱり想像できず怖かった。
この文は回答のような気がした。自分は死というものをすごく心配しているけど、その前に生まれてきたんだよなぁと。
良かった、生まれてきたんだ、すごく幸せだなって思った気がする。ていうか「泣けた」って書いてある。当時は真剣だったんだろうが、ちょっとアホだ。

今とはあまりにも違う事を考えていたので、びっくりした。というか、考えても仕方の無い事を考えていた気がする。