真面目

今日は珍しく若者数名が暇をもてあましていた。医局でわいわいやっていると、図書係の上司が来て「医局で購入して欲しい書籍はある?今年はまだ買ってないから」と聞かれた。ちょうど下肢の解剖図とにらめっこしていたので、「きちんとした解剖学アトラスが欲しいです」と答えた。
「そうですよねぇ」珍しくまじめな話題に乗ってくる後輩。「神経ブロックするのに、解剖図が無いのは不便ですよね」「麻酔科診療プラクティスとかじゃなくて、系統立った本が良いね」「図がたくさんの綺麗な本と、図は少しで説明が充実した本と、2冊あったほうが」と盛り上がり、「先生、我々さっそく、買いに行ってきますよ!」とまたたくまに書籍部へ脱出した。本当は外へいけるなら何でも良いのだ。
数種類の本をあれこれと比較する。私の学生時代はゾボッタとクレメンテが人気だったが、名著ゾボッタは版を重ねて生きている。図も綺麗。しかしネッターというアトラスが、図の彩りが良くわかりやすくて我々の気に入った。
ネッターともう一冊機能解剖の教科書を購入し、領収書をもらって医局へ戻った。
「今日は良い事をした!」とすがすがしい気分だ。マジックで不必要にでかく「麻酔科」と書きこんだ。しかし本棚に並べようとして、ふと首をかしげる後輩。
めったに開かれない洋書が何冊か並んだ棚に、古いゾボッタが2冊、肩身が狭そうに並んでいる。埃だらけだがゾボッタだ。解剖図はあったのだ。あちゃー。
マジックで書いちゃったので返品もできないし、仕方なく我々はそっとゾボッタを奥へ隠した。背表紙を奥に向けてタイトルも隠した。
小人閑居して不善を為す。