混合診療

昨夜、発熱しながらNHKの討論番組を見ました。医師不足についての討論でしたが、医療費にばかりかなりの焦点が当てられ、最後に混合診療を推進するかのような構成の誘導があり、気になりました。(長文です)
混合診療とは、保険給付の他に自費負担を上乗せして、高度な医療や待遇を受けること。原則的に今は禁じられています。
例として挙げられていたのが、近未来、心臓病になったAさんに示される2コース

  • 松コース 明日、即手術!部屋は個室で専属ナース、執刀はカリスマ医師、お値段は保険の自己負担プラス1千万円。
  • 梅コース 順番どおり1ヵ月待って手術、部屋は大部屋、執刀は新人医師。お値段は保険の自己負担分のみ。

こうすれば松コースの1千万は病院の収入となり、病院経営が楽になる結果、全ての患者さんに対する医療サービスが良くなると。正気で言っているのでしょうか。
病院としては当然松コースの患者だけを選びたくなる。自称カリスマ医師は、治療成績を良くみせるため、軽症の(治りやすい)患者を選びがちになる。差額を支払った患者は、「金を払ったんだから治って当たり前、わがままも許される」という意識を持ち、訴訟はさらに増え続ける。
何より、貧富の差で受けられる医療に歴然とした差が出てきます。国民皆保険の、世界一と認められている日本の医療に、自ら泥を塗るものです。
救急外来で貧しい人は24時間以上待たされ、やっと診てもらえると研修医。これは今現実にアメリカで起きていることです。(加入する保険会社の差のため)
番組に30代の肝炎患者で、お金がないためにIFN治療が受けられない方が出演していらっしゃいましたが、気の毒でなりませんでした。IFN治療には月5万円ほどの自己負担があるほかに、副作用がきつく、その間の就労が困難になるからです。このような患者さんを救済するのが社会の急務だと思いますが、混合診療が解禁されれば、そういった事例はもっともっと増えてくるでしょう。現在保険給付範囲内の治療も、適応外にされる可能性もあります。
さらに、混合診療医師不足はまったく関係のない問題で、混合診療が解禁されても、医師不足は解消されません。松コースを選んでも、医師そのものが足りなければすぐに治療を受ける事はできません。
某副院長の先生が、患者さんたちに向かって、「医療は他のサービス業と違います!医療・教育・福祉、これらは全ての方が平等に受けられるべきものです!よく考えてください!」と絶叫していたのが印象的でした。まったくその通りだと思います。

格差社会」「上流と下流」学歴・収入などの格差と不公平感がますます広がり、閉塞感が強まり、強い指導者を求める、社会全体がどんどん危うくなっているような気がします。そもそもこんな討論番組ではなくバラエティを見ている人の方が多いのでしょう。知らないうちにいいようにされてしまうのでしょうか。