熱帯魚入門

相方は熱帯魚が趣味だ。一緒に連れられて熱帯魚屋をまわっているうちに、いつもある種類の魚に目を奪われるようになってきた。
魚は「ベタ」という。名前が変だが、美しい色彩の長い尾が特徴で、この尾をふりふりしながら泳ぐので、慣れないドレスを着た女性がちょっとたどたどしく歩いている感じでとてもかわいらしい。
しかもなぜかコップに入れられたりして売られている。自分で水面に顔を出して空気呼吸ができるので、ほんとにコップでも飼えるそうだ。しかも安い。380円とか高くても900円とか、コップとセットで1000円とか。
変な色のエビ一匹が5万円するこの世界で、なんとかわいらしい値段であることか。
相方が普段魚の世話をするのをみて、なんて楽しそうなんだろうと常々思っていたが、あまりにも難しそうなので(温度計がついてたりpHを計っていたり薬を使ったり、餌には牛ハツやニンニクや小エビやら、あと群れの勢力関係を考慮して水槽を変えたりとか)自分には到底無理だろうとあきらめていた。
しかしコップでも飼えるベタなら私でも!
「これ欲しいなあ」とおずおずと言ってみる。店の人に値段を聞いてもらったら480円だという。じゃあくださいと言うことになった。「餌も・・」というと、小声でこの店は高いから別の店に行こうと言う。
店を代え、ついでに適当な入れ物は無いか物色した。透明で大き目のコップがあればいいのだが、家には無いからペットボトルでもいいかなあと考えていたが、相方の説明を聞いているうちに、気がつくとガラス製の水槽とフィルターのセット、水道水の塩素の中和剤、水槽内のインテリア(石と水草)を購入していた。全てのものの単価が、ベタより高かった。
「これなら何でも飼えるよ、うん」と満足げな相方。なんだか楽しくなってきてしまう自分。
恐るべしアクアリスト