愚痴その2

・・なんてことを考えてプリプリしながらお風呂に入った。湯船につかって、田辺聖子の「文車日記」をぱらぱらと読む。その中で紹介されている「沙石集」から。
鎌倉時代のある時期、くじで相手を決めて贈り物をすると不幸をまぬがれるという流行があった。ある日貧しい男がくじを引くと殿様の相手になってしまう。相手の身分に見合った贈り物をしなければいけないため、男は身を嘆いて妻に「長い事お世話になったがお別れだ。贈り物を用意する金はない。私は出家して僧になるよ」と言う。妻はすぐさま「何を言ってるの。この家と土地をうればなんとかお金はできます。きちんと贈り物をして、二人で一緒にどこかへ行けばいいですよ」と言う。
「長い間貧乏をさせて、その上そんな思いをさせることはできない」と断る夫に、妻は「こんな生きてる甲斐の無い世の中は、行き場に困ったり嘆いたりするほどの事もありませんよ」と言い放つ。家土地を売って金銀細工の贈り物をした夫婦は、感嘆した殿様に逆に土地を賜り、金持ちになって幸せに暮らす。
妻は、今ある日々の暮らしより、夫との愛が大切だったので、素直にそれを選んだのだろう。その時々で、大切なものを見誤らずに生きていけばよいのだな。そう思ったらなんだか怒りが消えた。どう生きるかは、誰かに決めてもらうのではなく、自分で決めれば良い。全てを手に入れる事はどだい無理なので、大事なものだけを選んでいけばよい。