手ごわい頭脳

手ごわい頭脳―アメリカン弁護士の思考法 (新潮新書)

手ごわい頭脳―アメリカン弁護士の思考法 (新潮新書)

アメリカン弁護士の思考法』というよりは、アメリカの司法制度のわかりやすい入門書です。
一見理不尽に思える弁護士の多さ、巨額の賠償金や、判例法とは、陪審員制度などの意義をわかりやすく説明しています。私もかなり強烈なインパクトで覚えていた「コーヒーが熱い」訴訟。日本では巨額の賠償金だけが報道されていたけれど、実は…というお話。
陪審員制度」の意義は、国家権力の暴走を抑える市民機構ということがわかりやすく解説されていました。ちなみに日本の裁判員制度とは、全くの別物であることがよくわかります。刑事事件では、事実関係の認定(有罪か無罪か)のみをする。民事では賠償金を決める。国を相手取った訴訟でも、判断するのは市民なので、国がこてんぱんに負ける場合もある。
日本では裁判員制度は刑事事件のみ。有罪無罪の判定だけではなく、死刑を含む量刑の判断をしなくてはいけません。法律を勉強した専門家でもないのに、人の罪が死に値するかの判断を正しく下せるのか…私にはとても自信が無く、裁判員を引き受けようと言う気持ちは今もこれからもありません。
ところでこの方の文は、非常に論理的で読みやすい。奥様が日本人、と巻末にありましたが、奥様や編集者の手助けを借りたとしても、日本語でこれだけの文章を書くのはすごいことだと思います。日本人でもこれだけの文章を書ける人はあまりいないのでは? それはやっぱり著者が弁護士として論理的な思考法を身につけているからだろうか…と思いました。