達人

休みの日、昼寝中にふと目が覚めた。同じく隣で昼寝中のオットはまだ熟睡中である。
「クーー、クーー」と気持ち良さそうな寝息が聞こえる。ぼんやりとした頭でふと「今顔面チョップしたらさぞびっくりするだろうなあ」という考えが浮かんだ。良く考えるとオットには迷惑な話だが、何しろ寝起きなので判断力が無い。
ニヤリとして躊躇無く片手を振り下ろした、その時!
目をつむったままのオットの手がさっと伸びて、はしっと私の手首をつかむと、一瞬とまった寝息が「・・・・クーー、クーー」と再開。
あまりの衝撃に目が覚めてしまった。オットは寝ていても殺気を感じるのだろうか。達人か。
しかし少ししてそっと手を振りほどき、頬の辺りをカリカリとくすぐってみたが、無反応。調子に乗ってカリカカリカリと顔中を掻くと、「う、う〜ん」とやや苦しそうな声。やはり無防備。ただの偶然だったのか。
起きてから聞いても何も覚えてなかった。