思うこと

医局派遣で2年間の予定で研究留学しているわけなんだけど、この「2年間」ってなんなんだろうか、とふと思う。長いので暇な人以外読まないでください。あと、そのうち削除するかも。
実験を習得して、安定したデータが取れて、立派な論文を書く・・・というのにはいささか短すぎるらしい。運よく良いデータが取れた人は頑張って1年くらいで書けることもあるらしいけど。それもPIの手取り足取りで可能になることであって、自分で実験をデザインできるまでにはいったい何年かかるのだろう。
「留学させてあげたんだから、規定期間で帰国して成果を持ち帰るべき。日本は人手不足なのだから。」という理論で責められると、それはそうだけど、そんな短期間で得られる成果なんて、そもそも持ち帰っても役立つかどうか…と思ってしまう。現にこの方式で留学を続けてきたうちの医局は、研究のうだつはさっぱり上がらない。単なる箔づけなのか。
どうせ「行って来い」というのなら、景気良く5年か10年行かせてくれたほうが実になると思うのだけど。
帰国してからも「人手足りないから臨床ね」せいぜい良くて「週1日は研究日あげるから」というパターンになると思うのだが、週1日で可能な実験って・・・? 研究を始めたばかりの私でも、24時間じゃ終わらない実験ばかりなんですけど・・・。
「日本の税金使って医者になったんだから、日本で社会貢献しろ!」という声も聞こえてきそうだけど、税金の恩恵って誰もが受けているものだし(それが税金だ)、私の両親だって共働きできちんと税金を納めてくれてたぞ。それで子供たちの学費と生活費と・・・、それで今まったく裕福ではありません。私だってもう何年も税金納めているし。それに長時間労働に見合わない給与、ボーナスも有給も社会保障も、満足な休息もない待遇で、訴訟や逮捕におびえながら散々働きましたが何か・・・ってすねた気分になってしまう。

留学の別な側面を見れば、初めて体験する異国での生活、なかなか通じない言葉、その中で少しずつ慣れて楽しみを見出していく等、刺激も非常に大きく、私は「研究の成果うんぬん」よりむしろそちらに夢中になっている。
各国からどんどん人を受け入れて教育するアメリカの懐の広さと余裕を感じるし、合理的な考え方、必要なところに人を手厚く配置するやり方に驚く。(病院にこれだけ人がいたら、そりゃ医療費は高いだろうなとも思うけど)
そういう面では良い国だと思う。もちろん社会には光と影があるのだけれど。少なくともアメリカにはろくに保険料も税金も払っていない私の出産を受け入れてくれる事にはとても感謝している。

こんな葛藤は未熟者の私だからするのかもしれない。というかどうせ半年でお産で、しばらくはかかりきりなのだから。でも少なくともオットには研究でも実りの多い時間を過ごしてほしいと思うのだけど、見透かしたかのように、尊敬する上司から
「まー、一旗揚げようなんて思わないでさあ、長い休みのつもりで、肩の力抜いて行って来てよ」
と言われた。まあ2年の留学とはそういうものなのかもしれない。
それならそれで、葛藤などせず思い切り楽しんで、終わったら日本で臨床医として生きていくべきなのだろうか。じゃあ何のために研究留学してるの?って堂々巡りしてしまう。